「生産清流化」は、製造企業における業務革新・組織革新のシナリオです。納期短縮を目標として事業環境の変化に対応できるスピードを獲得します。組織革新を進めるには個人のレベルアップが欠かせません。そのキーワードは「学ぶ化」です。改善を習慣化することで個人の心と技を変えていきます。
■改善の基本は5S
改善を習慣化するには5Sを基本にすることが効果的です。5Sすなわち整理・整頓・清掃・清潔・躾を実行することで改善の効果を目で見える形で実感するすることができます。また5Sは組織内のコミュニケーションの基礎でもあります。例えば整理とは「必要なものと不要なものを区別して不要なものを捨てること」ですが、これは物品の用不要に関する職場のルールを目で見える形にすることです。ルールを目で見るコミュニケーションによって伝達することに他なりません。また整理を進めると、不要物が置いてあれば、ひと目でルールが守られてないという状態が伝達できます。これも目で見るコミュニケーションです。
■整理から取り組む
5Sは整理から始めるのが定石です。整理が進まないと整頓はできません。また整理・整頓が進まないと清掃は行き届きません。
しかし5Sで最も難しいのも整理です。「何がいるか/何がいらなか」をどう判定するかが難しいのです。これについては前項で解説したように、要不要の判定の実例を積み重ねることが重要です。
■不要物の置き場を決める
要不要の判定をするには、判定対象とするモノを見える場所に集めるのが効果的です。これは目で見るコミュニケーションの第一歩でもあります。置き場所は2箇所作ります。「完全不要」「準不要」の2つです。
不要物を整理する場合、まずすぐに捨てずに不要物の置き場におきます。個人の各自の「完全不要」「準不要」のどちらかに置きます。
■現物を確認しながら要不要を判定する
週に1回程度、不要物置き場に置かれたモノに関して不要物判定会議を開催します。出席者は職場の社員と管理者です。
不要物判定会議では、まず「完全不要」の場所に置かれたモノをひとつひとつ確認し、最終判定者が廃棄を判定します。職場の管理者が最終判定者となります。小企業ならば社長が最終判定者となるのがよいでしょう。ひとつひとつ実物を見ながら判定していくのがポイントです。
次に「準不要」の場所に置かれたモノを判定します。準不要の場所に置かれたモノについては「すぐに廃棄」「廃棄しない」という判定結果だけでなく「1週間完全不要に移して様子を見る」という判定もありえます。「準廃棄」というグレーゾーンにあるものを実例を見ながら判定することで判定基準の明確化を進めます。
■要不要の判定事例からルールを設定する
要不要の判定を数10例繰り返すことで、関係者の間での判断の差が少なくなってきます。そうなったらば要不要の判定ルールを文書化します。
判定ルールはモノの種類によって変わるのが通常です。ルール作りにはモノの分類を決める作業が含まれます。次図にひとつの例を示します。顧客に届くモノと会社の中に留まるモノが大きな分類の観点です。
モノの分類例
■分類ごとに判定基準を明文化する
分類が決まったら、それぞれの要不要の判断基準を文書化していきます。判断の重要要素のひとつに「実際に使っているか」というものがあります。これを軸にした判断基準の要素を次図に示します。使っていないものでもすぐに捨てられない場合があります。例えば在庫や固定資産に登録されいているモノを廃棄する場合には、予算の裏づけや会計上の手続きなしでは捨てられません。
判断の観点例
■判断の基になる情報を整備する
要不要を判断する場合、「実際に使っているか」といったことが誰でもわかるようにするのが理想です。材料の在庫などでは「実際に使っているか」が入出庫の記録からわかる場合があります。その他にも次のような方法で「実際に使っているか」「頻度はどうか」がわかるようにできます。
使っているかがわかる情報の例
情報例 | 判断方法 |
使用したモノにシールを貼る | シールのないものは使われていない |
動いていないモノに毎月シールを貼る | シール枚数は使われていない月数 |
使用開始年月日を記入する | 古いものは使われていない可能性が高い |
有効期限を記入する | 有効期限切れのものは不要の可能性が高い |
管理者名を記入する | 異動した管理者名のものは不要の可能性が高い |
■判断基準を見直す
判断基準を文書化したら、それを定期的に見直すことをお勧めします。判断基準は適切だったか、新たに分類したほうがよいモノはあるかといったことを見直しし、基準書を改訂します。
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