第1章 デリバリー管理
1.4 全社的デリバリー管理 個別改善段階
(2)材料特性別発注
製造業で消費する材料は、多数あります。調達から見た特性も次のように様々です。
・製品の受注を受けてからでは調達が間に合わないもの
・最小発注量が1日の消費量より大きいもの
・製造現場で目で見る在庫管理をしたほうがよいもの
・ある程度の期間分をまとめた方がコストメリットの大きいもの
・日々の消費量のバラツキが大きく、予測できないもの
・単価は安いが非常に体積が大きいもの
したがって、すべての材料をひとつの発注方式で対応できるケースはほとんどありません。材料の特性を、後述する「材料特性マップ」を用いて可視化し、その特性に見合った発注方式を採用していくことが重要となります。なぜなら、資材の調達は工場の支出の大半を占めるだけでなく、社内の業務の流れやタイミングに大きく影響を与えるからです。
材料の特性に見合った発注方式は次の5パターンがあります。
@都度発注方式
決められた調達期間内に調達可能な材料に適用でき、生産日程計画に基づき資材所要量展開(MRP)の結果をそのまま発注します。都度発注方式は原則的に在庫がゼロ化でき、さらにMRPが自動的にできれば発注に関わる作業工数や管理工数の大幅な削減が実現できます。
A定期発注方式
需要予測がある程度予測できる材料に適用でき、週毎や1ヶ月毎などあらかじめ決められた定期的な発注タイミングで対象期間の必要量を発注します。
B定量発注方式(発注点管理方式)
在庫把握精度が高く消費バラツキの小さい材料に適用できます。発注点と発注量をあらかじめ決めておき在庫量が発注点を下回ったら発注します。この方法は、ある程度の在庫量は安全在庫として必要になりますが、機械的に発注できれば作業者の工数はあまり必要ありません。
C発注・納入指示分離方式
発注量をまとめたほうがコストメリットが大きく、かつある程度消費予測のできる材料に適用できます。発注と納入指示を分離して、1回で多量に発注しこまめに納入指示を行います。この方法は取引先との交渉がポイントとなります。
D現物直接管理方式
現場で在庫管理ができる材料に適用できます。現場で二重区画制などを活用して「目で見る管理」を行ない、在庫が少なくなってきたら補充発注を行います。
実際にある会社で材料特性別発注を採用し、きめ細かく発注方式を使い分けたところ、次のように多方面に効果が出ました。
・在庫金額削減によるキャッシュフローの向上
・在庫保管スペースの削減
・スケールメリットによるコストダウン
・発注のための作業工数や管理工数の削減
・材料不足による生産停滞の排除
材料特性別発注を導入しようとした場合、資材担当者のモチベーションが導入の障害になることがあります。材料・部品の単価ダウンと欠品させないことだけを、資材の役割と捉えている場合です。この場合には、納入リードタイム・納入ロット・発注方式で決まる在庫金額や陳腐化廃棄も、業者選定や資材担当者自身の評価指標に織り込むことが有効です。単価や欠品による機会ロスだけでなく、在庫・陳腐化を含めた資金の最小化を資材担当者の目標に設定します。
海外調達の場合、単に「単価が安い所が見つかったから切りかえる」のは問題です。カントリーリスクに対応する在庫や、納入リードタイム、納入ロット、発注方式を総合的に考えて、必要資金の最小化を図るのが資材担当者の役割です。
実際には、標準的な発注方式があてはまらない資材も存在します。農産物や貴金属など投機的に調達するものです。最近では半導体や電子部品もこれに相当するでしょう。半導体は納入リードタイムが長い、少量の調達が困難、供給者の都合でモデルチェンジされるといった特性があります。これに対しては、製品の販売総台数の計画と補修用部品を含めた一括調達や、アウトレット市場の開拓、他製品との部品共通化設計などが必要です。資材担当者だけでなく、営業・開発と一体になった取組みが必須です。