「生産清流化」は、製造企業における業務革新・組織革新のシナリオです。納期短縮を目標として事業環境の変化に対応できるスピードを獲得します。組織革新の方向は自律化です。自律化によって組織の意思決定スピードを速くします。意思決定を速くするために組織は「分権化」していきます。組織の前線に意思決定権限を持たせることによって変化への対応を速く自律的にできるようにします。
■3段階で自己決定化を進める
組織の前線に意思決定権限を持たせる場合、2つの段階に分けて進めるとよいでしょう。第1段階は日常業務の自己決定化です。営業・開発・調達・生産などで日々発生する業務の意思決定を前線に移譲します。第2段階は年次計画の自己決定化です。年次方針や年間の予算計画などを前線に移譲します。第3段階は中長期的な判断の自己決定化です。新たな事業の開始、正社員の採用、設備投資など、中長期に影響する判断を組織の前線に委譲します。
■中長期的な判断の自己決定化を進める
年次計画の自己決定化を卒業したら中長期的な判断の自己決定化へ進みます。課や係といった単位組織ごとに新たな事業の開始、正社員の採用、設備投資などを決定します。この段階に至ると課や係があたかも独立した企業のように振舞うことができるようになります
■経営理念を見直す
中長期的な判断を単純に前線に委譲すると、意思決定は早くなりますが、会社としてバラバラになる恐れも出てきます。それに歯止めをかけるのが経営理念です。意思決定は分散していますが、その判断の拠り所となる基準は共有している。これが自己決定化を進めた組織の理想形です。
重要となるのが経営理念です。これが間違った方向を示していたり、人によって解釈が違っていたりすると間違った決定がされてしまいます。中長期的な判断の自己決定化を進める際には経営理念の見直しや社内への徹底を進めるとよいでしょう。
■経営理念の例
一般に経営理念は文章で示されます。経営理念の内容は、大別するとビジョン(内的価値規範)とミッション(行動規範)に分かれます。例としてカレーショップCoCo壱番屋を展開する株式会社壱番屋の経営理念を以下示します。
株式会社壱番屋(CoCo壱番屋)の経営理念
経営目的「当社にかかわるすべての人々と幸福感を共有すること」
ミッション「経営を通じ人々に感動を与え続け、地域・社会に必要とされる存在となること」
社是「ニコニコ・キビキビ・ハキハキ」
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このうち、経営目的は「内的価値規範」に相当します。企業活動や意思決定の拠り所となるものです。一方、ミッションと社是は「行動規範」に相当します。日常の行動のありたい姿を示すものです。
「内的価値規範」だけや「行動規範」だけのケースもあります。コニカ株式会社(ミノルタとの合併前)は以下のように非常にシンプルでした。これは内的価値規範型の代表でしょう。
コニカ株式会社(合併前)の経営理念
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