納期半減の生産清流化
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今日の視点2019
 2018年  2020年

2019/12/21 素性が悪かったボーイング737MAX
 12月17日ボーイングが737MAXの製造を2020年1月に中止するという報道があった。2017年に納入開始された機体だったが、わずか2年余で製造中止となった。きっかけは2018年10月のインドネシアの墜落事故だった。離陸直後に墜落し乗員乗客189人の全員が死亡した。さらに2019年3月にはエチオピアで離陸6分後に墜落し、157名全員が死亡した。
 原因の概要は以下である。ボーイング737MAXは、1997年から生産された737NGシリーズの後継機として開発された。737MAXは燃費を改善するために737NGより大型のエンジンが搭載された。その結果、重心位置が変わり、機首が上向きになりやすい特性となった。機首が極端に上向きになると失速して墜落する恐れがある。そこで737MAXでは機首上げを検知し、自動的に機首下げ動作とする制御システムが導入された。墜落事故の直接原因は、センサー異常などがあった場合に制御システムが誤作動することだった。離陸直後に誤作動すると機首下げ、つまり地面方向に舵が切られたのだ。
 737MAXの生産中止はボーイングだけでなく、エンジンを供給するGEをはじめとするサプライヤの経営にも影響を与えるとみられる。だが基本特性の悪い製品の悪い点をカバーしようとしても本質的なダメさ加減は糊塗できない。これは古今の工業製品で繰り返し見られた現象である。さて、MRJあらためMSJの基本特性はどうなのだろうか。

2019/12/7 不平等の元凶
 国会で審議されていた日米貿易協定が、12月4日に参議院本会議で可決成立した。2020年1月1日から発効となる。
 桜を見る会の問題の影で目立たなかったが、日本の農業や自動車産業に影響する協定である。不平等条約との批判があるなかで、なぜ成立となったのか疑問である。米国大統領への贈り物であると考えなければ理解できない。米国に追随すれば地位が保全される人たち、そしてそれを積極的に支持する人たちと不支持を表明しない人たちの意思の現れだろう。
 権力に追随することで地位保全を図る構造は「桜を見る会」にも見られる。権力追随志向の官僚がお膳立てし、権力追随志向の人に発注する。そしえ権力追随志向の人を集めて支持基盤を固める。わが国に蔓延する「長いものに巻かれろ」「寄らば大樹の陰」「一億総××」といった志向は、多様性を認めず均質化を目指すかに見える。だが結局は不平等を生み出しているのだろう。

2019/11/16 桜を見る会のサプライチェーンは?
 国会で「桜を見る会」をめぐる審議が行われている。政治や法律の面はさておき、私はこうした行政や政治家のイベントのサプライチェーンがどうなっているかに関心がある。
 桜を見る会は内閣府が行うイベントである。だが内閣府が実務をやっているはずはない。招待者リストの作成、招待状の印刷と発送、当日のテントや機材の設営、食事や飲み物の仕出し、警備や誘導などの業務は専門業者が担当しているはずである。そしてそれを取りまとめる元請けの存在が想定される。サプライチェーンを想像すると金を出した人、受け取った人の関係は比較的シンプルであろうと思う。
 問題は、安部首相関係者が参加した前夜祭や観光ツアーといったイベントのほうだ。こちらも候補者リスト作成からはじまって、案内状の印刷と発送や当日の随行など様々な業務がある。ホテルや旅行会社だけでなく、とりまとめる元請け業者がありそうだ。前夜祭や観光ツアーの金を出した人、受け取った人を想像するとかなりややこしい。前夜祭に参加するために5000円払った人は明確だが、不足分は誰が支払ったのか。その資金はどういったチェーンから流れてきたのか。謎解きはこれからだが、案外おなじみの人が登場しそうな予感もある。

2019/11/2 上昇しないスペースジェット
 MSJスペースジェットに改名した旧MRJだが、名前のようには上昇していない。10月31日の報道によると、三菱航空機と米地域航空会社の間で交わされていた90席クラスのスペースジェット100機納入の契約が解消されるという。70席クラスの契約が新たに交わさせる可能性はあるようだが、事業性への影響は大きい。
 初号機納入時期は5回の変更を経て2020年半ばとされていた。だが6度目の延期もあるという。受注が伸びない、あるいは減っていく原因は納期遅れである。国策事業は甘い計画に特徴がある。私は原子力や半導体とともに旧日本軍の体質との類似を挙げてきた。計画が甘いだけでなく間違っていても突き進む点で、インパール作戦を想起させる。

2019/10/19 強靭化は期間限定なのか
 10月12日から13日にかけて台風19号が関東から東北を縦断した。河川の氾濫が多発し、死者不明者80名以上の大災害となった。大型で強力、しかも速度が遅かったため、丸1日以上広い範囲で雨が降り続いた。私が住む相模原市でも死者が出た。山梨方面の鉄道や道路が寸断され流通への影響が今も続いている。
 災害に直面して気になったのは国が推進するとされる「国土強靭化」なる勇ましい掛け声の実態である。金額面からあらためて報道を調べてみると、「2018年からの3年間で最大4兆円の財政支出」となっている。2018年には約1兆円の予算だった。2019年春の報道によると「2019年予算では防災・減災対策に1兆3475億円」となっている。位置づけは消費増税に対応する景気押し上げ策のひとつとされているようだ。毎年5兆円を超える防衛費に比べると、勇ましい名前の実態は、増税の目くらましのための期間限定サービスかのようだ。
 令和の時代は、昭和の高度成長期やバブル景気の時代に積み上げた社会インフラの老朽化が進む時期でもある。社会インフラの保全や更新は腰を据えて取り組まなければならない。期間限定サービスではない持続的な政策、自称ではなく誰が見ても「骨太」の政策が必要ではないか。

2019/10/5 まやかしのキャッシュレスポイント還元
 10月1日から消費税が10%に上がった。同時にキャッシュレス決済のポイント還元制度がスタートした。たしかに消費者にとってはメリットがありそうな制度である。だが問題は中小・小規模事業者のほうである。
 経済産業省の事業者向けPRページを見ると事業者のメリットが4つ挙げられている。「今なら端末導入のご負担なし!」というメリットはまあいいだろう。「消費者還元で集客力UP!」は疑問である。対応しない事業者は「集客力DOWN!」となる。「レジ締め・現金取扱コストを省いて業務効率化!」はウソに近い。現金扱いは残るし、複数の決済サービスを使うと複数の経理処理が発生する。「決済手数料3.25%以下!」は完全にウソである。現金決済なら手数料ゼロである。
 経済産業省が誰のためにこの制度を作ったのかは明白である。消費者向けを装いながら決済事業者、端末製造業者、広告業者向けに行っている。中小・小規模事業者の犠牲と消費者の税金をこれらの業界に貢いでいるようにしか見えない。

2019/9/21 風の脅威
 台風15号は、9月9日の未明に東京湾を通過していった。この台風は風が強く、千葉県の館山市で最大瞬間風速52m/sを記録した。千葉県では送電線や電柱の倒壊が多数発生し、9月21日現在も停電している世帯が残っている。
 台風の被害というと川の氾濫や高潮による水害をイメージするが、風害も忘れてはならない。風害で参考になるのが沖縄県である。特に宮古島では以前から強い台風に何度も遭遇してきた。最も最近では今年の台風13号である。9/5に宮古島を通過し、最大瞬間風速61.2m/sを記録、9割の世帯で停電したという。過去に遡ると以下のような強い台風があった。
  ・2003年台風14号 9/11に上陸 最大瞬間風速74.1m/s
  ・1968年台風16号(第3宮古島台風)9/23に通過 最大瞬間風速79.8m/s
  ・1966年台風18号(第2宮古島台風)9/5に通過 最大瞬間風速85.3m/s(日本の観測史上1位)
  ・1959年台風14号(宮古島台風)9/15に通過 最大瞬間風速は不明だが中心気圧908hPaを記録
 記憶に新しいところでは2003年の台風14号がある。宮古島島内では電柱が軒並み折れ、風力発電用風車7基のうち 3基が倒壊した。
 台風の語源は中国語の大風(タイフーン)だという説がある。宮古島の言葉では「うぷかじ」と呼んでいる。「うぷ」は大きい、「かじ」は風だから中国語と同じである。沖縄に習って鉄塔や電柱だけでなく一般住宅の構造も見直す必要がありそうだ。まずは屋根瓦から見直したらどうだろう。

2019/9/7 リクナビ問題の裏にあるもの
 9月6日、厚生労働省は株式会社リクルートキャリアに対し職業安定法に基づく行政指導を行った。同社が運営する就職情報サイトのリクナビから得た就職希望学生の個人情報を販売していた問題に関してである。リクナビで得た学生の情報から内定辞退率を予測し、企業へ販売していたというものだ。
 個人情報保護の観点から学生や大学側が問題視していることを受けての行政指導であろう。だが私は内定辞退率を購入した企業の姿勢に疑問を感じている。
 企業は内定辞退率をどのように使おうとしたのだろうか。内定辞退率が高い学生を回避しようとしたのか。内定辞退率が高い学生とは内定を多数とる学生である。言い換えると意欲と能力が高いと思われる学生である。それは自社が内定を出すべき学生ではないか。では内定辞退率が高い学生に自社も内定を出そうと考えたのか。それは自社に選考能力がないことを自白していることに等しい。
 いずれにしても外部情報に頼り切り、思考を放棄し多数派につこうとする姿勢である。もしかすると日本企業だけでなく日本人全体がその姿勢に傾いているのではないか。

2019/8/24 今夏の電力消費
 2019年、関東地方の梅雨明けは、7月29日だった。異常に早かった2018年よりも30日遅かった。8月も湿度が高い状態が続いた。東京電力管内の電力消費は8月7日の午後に5,543万kwを記録し、今年最大となった。40℃を連発していた昨夏よりもやや低い数字であった。この日の供給力は6,126万kw、負荷率は90.5%と余裕十分だった。
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2019/8/10 突然増えた?送電線の空き容量
 8月1日の朝日新聞によると東電グループの東京電力パワーグリッドが、送電線の空き容量に関して驚きの試算を公表した。これまで東電は千葉県の房総地域では「送電線の空きはゼロ」「再生エネ発電所の受入れはできない」としてきた。ところが新しい方法で試算すると「送電線の増強なしでも再エネが入る」と主張を変えたのだ。
 東電に限らず電力業界が送電線の空きを計算する場合、「実績の最大電流が常時流れる」「将来予定されている電源を加える」という前提を置くのが常套手段だった。容量不足を理由に新たな発電事業者を排除しようとしてきたのだ。だがピーク時を除けば、実際の空きは十分ある。
 しかし東京電力は他電力会社と違い、目先だけ儲けられる原子力発電所の運転再開ができない。そこで発電事業ではなく送配電事業で儲けようという方針に転換したのではないか。ただし「容量は空いています でも送電量は高いですよ」という商売をしそうである。

2019/7/27 国会のバリア
 7月22日に参議院選挙が行われ、48.80%という低投票率で終わった。与党第一党の自民党が得票数、議席数を減らすなかで、れいわ新選組が得票し2議席を獲得したことが目立った。れいわ新選組の当選者は障害があり車いすを使っていることが話題になっている。他にも車いすを使う議員が1名当選したと聞く。今回一番躍進したのは障害者だろう。
 しかし企業には2%の障害者雇用が義務づけられている。それと比べたら国会の障害者比率はまだまだ低い。さらに世間とのギャップが大きいのが男女比率である。女性議員の比率は2018年2月時点で衆議院10.1%(47人)、参議院20.7%(50人)(内閣府男女共同参画局の男女共同参画白書平成30年版)である。女性の人口比率51.3%(総務省統計局の人口推計2019年7月)との乖離は大きい。全人口の2.1%いるはずの外国人には選挙権も被選挙権もない。
 女性が国政や選挙に参加したのは1946年の選挙からである。当時の国会には女性トイレがなかったと聞く。それに比べれば多少前進しているのだろう。しかし議会や投票所に真のバリアフリーが訪れるにはあと何年かかるのだろうか。

2019/7/13 三菱がボンバルディアを買収
 6月25日、三菱重工業はカナダのボンバルディアの小型旅客機事業の買収に合意したことを発表した。三菱重工はボンバルディアの小型機CRJの型式証明、販売、保守、顧客サポートなどを引き継ぐ。米国とカナダの4カ所のサービス拠点はスペースジェット(旧MRJ)にも使われるという。
 旅客機は、需要増が続くということで三菱重工業が参入しようとしてきた。しかし日本航空機開発協会のデータなどを見ると、需要増といっても機体数で年率ひと桁パーセントのレベルである。単価低下を想定すると既に成熟市場である。企業の事業統合などが起きているのも成熟市場の典型的な動きである。
 成熟市場に後から参入しようとする企業は、開発主導の夢見る体質ではなく、財務主導の冷徹体質でなければ成功しないだろう。国が主導する国策体質の企業に勝ち筋は残っているのだろうか。

2019/6/29 老後2000万円問題
 6月3日、金融庁のワーキンググループが「高齢社会における資産形成・管理」なる報告書を公表した。これを端緒としたいわゆる老後2000万円問題が国会で問題となった。結局、ワーキンググループに諮問していたはずの財務大臣が報告書の受取りを拒否する事態となったが、野党が7月の参議院選挙の争点にしようとしている。
 個人差はあるが年金だけで老後資金が安泰な人は稀であろう。そんなことは国も個人も以前からわかっていたはずだ。しかし政府は「100年安心」などというキャッチフレーズでごまかしてきた。個人も思考を放棄した人が多かった。
 歴史を紐解くと軍人や公務員以外の労働者向けの年金は、1942年に施行された労働者年金保険法に端を発する。このときの目的は戦費調達だった。1942年当時の平均寿命のデータは不詳だが、1947年の政府統計によると男性の平均寿命は50歳、女性は54歳であった。1942年にはこれよりも短いと思われる。その時代に支給開始年齢55歳ではじめた制度である。最初は国の丸儲けだったはずだ。
 その後、支給開始年齢は55歳から60歳、65歳と引き上げられ、給付水準も改訂されてきた。しかし1950年代に平均寿命が60歳を突破したころから制度の破綻は必定だった。半世紀以上ごまかしを続けてきたのだ。いまさら報告書をなきものにしても、うやむやにできるものではない。

2019/6/15 MRJの改名
 6月5日、三菱重工業はカナダのボンバルディアの小型旅客機事業の買収に関する事前協議を進めていることを発表した。整備拠点等を得たい三菱側と旅客機事業を再編したいボンバルディア側の双方にメリットがあるとされる。またMRJの改名も発表された。新名称はMitsubishi SpaceJetだそうだ。改名の目的はイメージ刷新にあるようだ。
 MRJには納期遅れのイメージが染みついている。当初2013年とされていた納入は現在2020年半ばとされている。だがこれも達成できるかは不透明である。イメージ刷新といっても略語ではMSJでありRがSに一文字後退したに過ぎない。「撤退」を「転進」と呼び変えた旧日本軍の姑息さに通じるものがある。
 国策事業として進められているMRJは、常に市場や企業の実力よりも国の思惑が優先されてきたように思う。国が先導する事業は甘い計画に特徴がある。MRJ改めMSJはますます原子力や半導体に似てきた。

2019/6/1 レアアースという爆弾
 6月1日、中国は米国からの輸入品の関税を25%に引き上げた。関税引き上げの応酬となっている中で、アメリカが中国からの輸入品に課す追加関税の対象からレアアースは除外されている。だが今週、中国の習近平主席がレアアースの工場を視察したというニュースもあった。メディアは中国がレアアースの禁輸に向かうのではないかという憶測を示している。
 レアアースは産業のスパイスとされる。少量使うだけで磁石や光学ガラスの性能を飛躍的に向上させる。レアアースの関税や禁輸は産業への影響が大きいことを米中両国とも認識している。しかしそれゆえ中国が切り札として使うことが想定される。
 関税引き上げだけでなく禁輸という手段を使うならば、貿易戦争での爆弾となるものはエネルギーや食料などもありそうだ。わが国は貿易戦争が長期化することを想定して立ち位置や戦略を考える必要がありそうだ。

2019/5/18 鎖国の時代
 米中貿易戦争が激化している。5月10日、米国は2000億ドルにあたる中国からの輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げた。トランプ大統領は保護貿易主義によって、自身の支持者へアピールしたいのだろう。だが、追加関税は商品の値上げによって、米国消費者が負担することになるという説もある。
 グローバル化とは世界の国が相互に助け合うことでもある。グローバル化が進展した中で保護貿易主義に舵を切っても誰も得をしない。私はそう考えていた。だが長期に続けたらどうなのか。グローバル化とは助け合いの一方で、競争激化・先進国の賃金低下と人余りを生んできた。それが変わる可能性がある
 日本は江戸時代に経験している。いわゆる鎖国である。実際には海外との貿易は行われており鎖国には当たらないという説もあるが、現代なら保護貿易主義に相当するだろう。江戸時代の前は自由貿易・グローバルの時代だった。それを鎖国に舵を切った結果が江戸時代250年の安定的繁栄である。
 保護貿易主義とは地産地消ということである。長期に続ける覚悟があるなら悪くないのかもしれない。だが問題は米国大統領が長期展望を持っていると思えないことである。

2019/5/4 MRJの試験成績は?
 4月16日、三菱航空機の水谷社長が会見を開いた。会見によると、国産ジェット旅客機MRJは3月3日から米国で型式証明のための試験飛行を開始したとされる。現在の試験には4機が充てらている。さらに納入延期の原因となった設計変更を反映した試験機2機を6月末までに完成させる予定という。
 現時点で、初号機納入は2020年半ばとされている。しかし試験飛行には、それ自体にかかる日数と試験で出た問題を対策する日数が必要である。試験をすれば必ず問題は発生する。その発生量によって試験期間は大きく変わる。
 ボーイング787は試験飛行開始から型式証明取得までに1年8か月かかった。ホンダジェットは約2年かかった。両機ともに機体とエンジンの両方が初物でありMRJのケースに似ている。さてMRJはどうなるか。

2019/4/20 自動車産業の嘘
 4月12日、スズキは検査不正問題に関する調査報告書を発表した。資格を持たない検査員による検査や、不合格車両を合格としていた事例があったという。4月18日には国土交通省へ202万台のリコールを届け出た。
 スズキは2016年夏には試験を行わない燃費表示が問題とされた。2015年3月には199万台のリコールを発生させていた。しかし検査不正は最近の問題ではなかった。報道によると1981年6月から不正が行われていたとされる。
 日産、スバル、三菱自動車など自動車業界ではたびたび不正やリコール隠しが発覚してきた。日本の基幹産業のひとつである自動車産業は、長い間、嘘や不正を部品としてきたことがはっきりした。

2019/4/6 平成31年度の行方
 4月1日、次の元号「令和」が発表された。はじめて聞いた時には「零和」つまりzero sum、あるいは「冷倭」つまりcold Japanを連想した。最初はこの連想から違和感を感じ、次にこの連想が今の日本に合うような気がし、さらに1日後には慣れから特別な感情は湧かなくなった。
 元号の字や音よりも気になるのは始まる日付である。なぜ5月1日始まりにしたのか。4月1日始まりにすれば国の年度と一致した。それをわざわざズラした。年度はスタートした日の年で呼ばれるのが通例である。「平成31年度」が始まったところだが、この呼び方をどうするのか。
 個人的には和暦を使わないようにしているが、役所との付き合いの関係で気になる。「平成31年度」の名称を継続するのか。5月1日から「令和元年度」に衣替えするのか。衣替えしておかないと、令和2年になっても「平成31年度補正予算」などという代物が登場する事態になる。しかし衣替えした場合、年度の中の月を言及するときどうするか。「令和元年度4月」と呼ぶのか。
 改元はもともと為政者の権力を示すために行われたと聞く。国民生活に不都合が出るほうが権力を示せるのだろう。オリンピックのためのサマータイム論と同じで、いい迷惑である。

2019/3/23 ボーイング737MAXの事故
 3月10日、エチオピアのボレ国際空港から離陸したエチオピア航空機が離陸6分後に墜落した。乗員・乗客157人が犠牲となった。飛行機はボーイング737MAX8型である。
 原因と目されているのは2017年に就航した737MAXシリーズに搭載された操縦特性向上システム(MCAS)である。MAXシリーズは燃費向上のためにエンジンが換装された。その影響で重心位置が変わり、失速しやすくなったとされる。その失速を回避するために追加されたのがMCASである。
 2018年10月にはインドネシアで同型機が類似の墜落事故を起こしている。その事故の状況も合わせるとMCASが原因との疑いが濃くなっている。センサーに不具合があると、MCASが機首下げ、つまり地面に近づく方向に制御するのだ。
 もう一つ問題なのはMCASの自動制御を解除する手順が複雑だということである。ボーイングの航空機は自動操縦中に手動操作を加えた場合、手動操作に切り替わるとされてきた。ところがMCASの解除はこの設計思想を踏襲していないようだ。事故機のパイロットはMAX8型の訓練を受けていなかったという報道もある。つまり、MCASの異常が発生し、手動操作への切替もできずに墜落したと推測される。
 どんな機械でもユーザインターフェースを変えるのは慎重でなければならない。だが航空機であっても操縦方法が安易に変更される状況が不安である。

2019/3/9 幻の景気拡大
 3月7日に内閣府から2019年1月の景気動向指数が発表された。その結果、1月に達成したとみられた「戦後最長の景気拡大局面」が幻になる可能性が出てきた。
 あらためて景気動向指数のグラフを眺めていると、消費税が8%になった2014年4月以降、指数は横ばいである。そもそも景気拡大と景気後退の2種類しか呼び方がないのが問題だと思う。この5年間「景気停滞」と呼ぶのが実感に合っている。
 「景気停滞」の実態に「景気拡大」という語をあてるのが第1の幻である。さらに日銀が株を買い支えるという禁じ手を使ってきた結果の停滞である。ここに第2の幻がある。
 加えて景気動向指数には毎月勤労統計調査の結果が反映されている。毎月勤労統計の改ざんを修正したために内閣府のホームページには修正に関するお知らせがあがっている。景気動向指数には毎月勤労統計以外の要素も反映されていると思うが、それらも改ざんされているのではという疑念がぬぐえない。指数自体が幻である可能性も否定できない。

2019/2/23 ふるさと納税100億円還元の欺瞞
 2月5日から大阪府泉佐野市がふるさと納税に関する「100億円還元閉店キャンペーン」を開始した。返礼品のほかに10-20%のAmazonギフト券をつけるものである。泉佐野市はふるさと納税に関して昨年から総務省との確執があった。その対立がピークに達したのが今回のキャンペーンである。私は最初、泉佐野市に肩入れしたい気持ちだった。だが今は違う。このキャンペーンは欺瞞と誇大をまとっているからだ。
 最初の疑問は「100億円」である。泉佐野市の平成30年度の予算規模は、一般会計予算563億円、うち人件費が55億円である。その規模の市が、なぜ100億円還元できるのか。それは先に寄付金をもらうからである。返礼品を仕入れる運転資金の調達は心配しなくてよい。民間企業では考えられない仕組みである。お役所ならではの特権を利用している。
 運転資金の問題がないとしても、まだ疑問がある。受付事務や返礼品の多さで破たんすることはないのだろうか。事務を外注し、地元産品が少ないようなのでこれもクリアできそうである。
 次の疑問は「何が100億円なのか」という点である。私は最初Amazonギフト券の合計が100億円なのだと思った。だが泉佐野市のサイトを見ると「100億円還元」「なくなり次第終了」とだけ書かれている。返礼品+ギフト券で100億円かもしれない。地元産品がなくなったら終了かもしれない。これに関する説明は発見できなかった。
 つまり相手の資金、外注の人員、大手企業の返礼品に頼った詐欺まがいのキャンペーンなのだ。最大の問題は、良心を捨てさえすれば他の市町村が容易に模倣できることである。模倣犯が横行すると、結果的に地方税の合計は目減りし、大手企業とAmazonだけが儲かることになる。

2019/2/9 消える北方領土
 2月7日は「北方領土の日」だった。昨年の北方領土の日の政府広報には「わが国固有の領土」という言葉があったという。それが今年の政府広報では消えていると話題になっている。今国会の首相や外相の答弁からも「わが国固有の領土」という言葉が消えたという。
 わが国はこれまで一貫して北方領土4島に対するソ連やロシアの不法占拠を主張してきた。その主張を引っ込め、2島返還での妥協に舵を切った。だがその妥協で合意できる保証はない。結果的に0島となる可能性も大きい。
 このままでは言葉だけでなく実体としての北方領土も消えそうである。四国に次ぐ面積の島は択捉島と国後島であるが、このままでは沖縄本島がランクアップすることになる。もっとも沖縄も日本固有の領土と言い難い実態がある。政府は外国に金や領土を差し出して何を得ようとしているのか。その説明もなく進む状況では、金や領土を政治家個人の保身のために使っていると思わざるを得ない。

2019/1/26 日立製作所がイギリス原発撤退
 1月17日、昨年から噂されていた日立製作所のイギリス原発の建設凍結と事業の中断が発表された。事実上の撤退であろう。工事総額は200億ポンド(約2兆8000億円)とされていたが、凍結によって2019年3月期に3000億円の損失を計上するという。日立は2017年にウラン濃縮の開発事業から撤退したが、今回も損失が3000億円で済んで良かったというべきだろう。これ以上進めても傷が深くなるだけだ。
 東芝は、子会社のウェスチングハウスが経営破綻して原発輸出から撤退したが、撤退の決断が遅れたことで大きな傷を負った。残るは三菱重工業である。破綻懸念があるフランスの原子力大手アレバへの出資は既に取返しがつかないが、トルコの原子力発電所の事業も撤退する方向と伝えられている。これも早く決断したほうがいい。三菱はジェット機MRJの開発遅延リスクも抱えているからである。
 これで日本の原発輸出は全滅状態となる。苛烈な原発事故を起こした国が原発を輸出するのは、そもそも無理筋だった。原発輸出だけでなく国内のエネルギー政策も早く転換することが望まれる。無理筋の原発に代わる自然エネルギーへの転換を進めないと、原油価格上昇で2018年に続いて2019年の貿易収支も赤字になりそうだ。

2019/1/12 異常の日常化
 2019年が始まった。昨年から続いているのは異常の日常化ではないだろうか。常時ある異常気象はすでに変動の範囲となっている。株価は乱高下しているが、背景にあるのは日銀の買い支えという異常施策である。これもまた常態化している。日韓問題も異常事態だが、日常の風景となりつつある。
 厚生労働省の毎月勤労統計の不正も「また厚生労働省か」という感想だけを残しそうである。省庁や自治体の障がい者雇用の不正についても誰かが責任をとったという話は聞かない。日産を初めとした企業内の不正も毎日のように報道されている。
 日常化した異常に慣らされるのが怖い。異常は「異常である」と言い続ける必要がある。さもないと気がついたらとんでもない状態にさらされているような気がする。

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