第2章 5つのステップ別実施事項
(2)個別改善段階の評価制度:職場内のモノの流れを評価する
個別改善段階は職場内のモノの流れを改善する。評価制度もモノの流れのスピードに着目する。ところがスピードは時間である。モノの大きさや個数に比べて計測しにくい。
そこで時間以外の評価指標も設定しておく。現場現物と対応しやすく、かつスピードに関連する評価指標にする。言い換えると、その数値が改善されるとスピードが向上するような評価指標を選ぶのだ。
代表例は「ルート長さ」である。「ルート長さ」は職場内のモノの移動距離を示す。職場内のモノの出発点から終着点までの距離を測定する。例えば部品置場を出発していくつかの加工工程を経て製品置場に至る流れがあるとする。部品置場の入口から出口までの距離、部品置場から第1工程の間の距離、第1工程の入口から出口までの距離、第1工程から第2工程の間の距離というように製品置場の出口までの距離を積算する。モノの流れに分岐合流がある場合には、最長の距離をルート長さとする。
ルート長さが短いほど流れのスピードが速いことは直感的にわかるであろう。しかしこれは単に運搬距離の問題ではない。ルート長さの長短は、工程内・工程間に仕掛が停滞するスペースの大小に関連しているのである。
もうひとつ代表的な指標は「ライン化率」である。「ライン化率」は職場内に並列のラインが複数ある場合にその間の分岐合流の少なさを示す。全製品量に対して、本来のラインで加工された製品量の比率で計算する。
複数のラインがそれぞれ独立していれば流れのスピードは速い。しかしライン間でモノを動かす場合がある。本来のラインをはずれて別のラインで加工されるモノが多いほど流れのスピードが下がる。例えば複数のユニットを合流させて組み立てる場合、ひとつのユニットが遅れると他のユニットが停滞する。また複数の前工程のモノを1つの後工程で交互に加工する場合にも停滞が発生する。ライン化率はこうした停滞の少なさを表す。