納期半減の生産清流化
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製造企業のデリバリー管理とSCM
第2章 サプライチェーンマネジメントの実践
2.1 サプライチェーンマネジメントの進展
 (2)ブルウイップ効果あるいはフォレスター効果

 サプライチェーンマネジメントを歴史的な進展に沿って振り返ってみましょう。歴史的といってもSCMという言葉が一般に知られるようになったのは1990年代中盤以降です。

 一般に、商品は多段階の生産・流通過程を経て、供給者から需要者へ届けられます。SCMという言葉が登場する前から、「ブルウイップ効果」あるいは「フォレスター効果」戸呼ばれる現象が知られていました。ブルウイップとは牛を追うムチのことです。手元を小さく動かすと、ムチの先端は大きく動きます。多段階の生産・流通過程でも同じような現象が見られます。最終消費者の小さな需要変動が、卸売業者・製造業者・材料供給者を経て上流に伝えられるうちに、大きな変動となります。この現象は、実際の流通過程の現象を観察して発見されたものです。

 フォレスター効果も同じ現象です。これは発見した人の名前に由来します。多段階生産過程のモデル実験から見出されています。

 ブルウイップ効果の原因は、「過剰反応」と「リードタイム」だと言われています。「過剰反応」とは、思ったより売れた場合に「もっと売れるのではないか」という心理から、次回の仕入れを多目にすることを指します。

 市場全体が品薄の場合は、もっと顕著になります。仕入れ担当者が「他の会社に買われたらモノがなくなる」と思った場合です。買い方が投機的になります。穀物や電子部品の市場で見られる現象です。

 しかし思ったより売れる状態が、永久に続くことはありません。思ったより売れない時期がやってきます。その時に大量に在庫が残っていると、その次の仕入れは、在庫調整のために減らされます。こうして需要の変動より仕入れの変動のほうが大きくなります。さらにサプライチェーンの各段階でこうした心理が働くと、上流に行くほど変動が増幅されるのです。思ったよりも売れなかった場合に「もう売れないのではないか」という心理が働いた場合も同様です。

 「リードタイム」もブルウイップ効果を演出します。例えば、小売店の売上結果は、小売店の仕入れ業務プロセスを通して卸への発注情報に変わります。そこでは事務のリードタイムがかかります。発注情報が、納入品に変わるのは、納入リードタイムの時間が経過してからです。こうしたリードタイムが、多段階の流通過程のあちこちで存在するとどうなるでしょうか。小売店の売れ行きは落ちている時に、卸での仕入れは増えつつあり、同時に材料納入業者は減産体制に入っているという状態が発生します。

 ブルウイップ効果の原因は、あとふたつあります。「ロット」がそのひとつです。少量づつの需要に対してロットまとめして供給することがあります。1回供給すると、しばらく供給しなくてよくなります。これが変動の原因です。さらにその変動が注文情報に乗って上流に伝わります。

 もうひとつの原因は、筆者が「販売予算のワンウエイクラッチ現象」と呼んでいるものです。その原因は予算制度の運用心理にあります。月次の販売予算に対して実績が上回った場合、それが続く見通しがあると、予算の上方修正は速やかに行われるのが常です。しかし実績が下回り、それが続く見通しがあってもなかなか下方修正はされません。それどころか「期末までに累計で達成したい」という願望から、前月の未達成ぶんが翌月以降の販売予算に上乗せされることがほとんどです。そしてそれが見直されるのは期末です。期の中では上方にしか修正されないので「ワンウエイクラッチ」なのです。半年単位で仕入れや生産が大きく変動するのは、これが原因です。

 ブルウイップ効果を緩和したいというニーズが、SCMというコンセプトを生んだ原動力でした。サプライチェーン全体を集中コントロールすれば、ブルウイップ効果を改善できるという考えかたでしょう。

 ところで、トヨタ生産方式ではSCMが話題になる以前から、トヨタ生産方式ではブルウイップ効果を緩和する要素を持っています。もちろん製造リードタイム短縮は、その要素です。カンバンは、発注量に思惑が入らないという効果と、事務リードタイム短縮効果があります。平準化生産計画と1個流しは、ロットによる変動をなくしています。

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