第1章 デリバリー管理
1.8 全社的デリバリー管理 製品(流通)在庫削減段階
(3)開発と営業におけるデリバリー管理
第1章の解説は、製造業の中でも特に生産部門向けでした。開発部門と営業部門に対しても、デリバリー管理の5つの活動と5つのステップの考え方は適用できます。
ところが、開発部門と営業部門で適用するには以下のような課題があります。
・非定型業務が多い業務プロセスをどうモデル化するか
・繰り返し性が少ない業務に対して、タイミングを決める基礎データである
作業時間や処理能力をどう把握するか
この課題をクリヤしている企業では、すぐにデリバリー管理の考え方やツールが適用できることでしょう。しかし、どんな企業でも活用できるようにするには、開発部門や営業部門における業務プロセスのモデル化と時間の基礎データの把握方法に関するツールの開発が課題です。
その第1歩は職場の5Sです。製造職場だけでなく、開発や営業の職場でも5Sを実施すべきです。特に「整理」を実施した時に、いらないモノを区別するだけでなく、なぜそれが発生したかを考えるのです。それが問題の顕在化と同時に、業務プロセスのモデル化の第一歩となるのです。机の上のいらない書類がなぜ発生したかを考えると、そこには情報フローのタイミングを悪化させる業務プロセスとその問題が浮かび上がってきます。
例えば、机の上に積まれたまま放置されている書類があるとしましょう。それが他部署から送られてきた書類ならば、職務権限上もともと不要だったかもしれません。あるいは、その机に座っている人の処理能力不足の問題かもしれません。他部署へ渡すべき書類ならば、内容に不備がある不良品のために放置されている可能性もあります。一度読めば不要になるメモのような書類が放置されている場合ば、廃棄作業のサイクル、つまり毎日整理すべきものを面倒がって1カ月ためてしまったということかもしれません。
整理を進めながら、こうした業務プロセスにおける問題を発見して改善に結び付けることがデリバリー管理における5Sの最大の効果です。
また開発に特有の現象としては、「設計・試作の評価」「共通化設計」が、デリバリー問題を改善する上での障害になっているケースがあります。営業では、「販売リベート」「新製品売上計画」などが障害になっていることが、よくあります。こうした障害は、サプライチェーンマネジメントを推進しようとした場合に、特に問題になってきます。これらについての対策は、第2章で紹介します。