6.組織的先延ばしの対策 (1)組織的先延ばしの類型 前章までは「個人的先延ばし」の類型と対策を示してきました。しかし私の経験によると、先延ばしには「個人的先延ばし」以外に「組織的先延ばし」と呼べるものがあるということがわかっています。本章では組織的先延ばしの類型と対策方向に言及します。 「組織的先延ばし」とは先延ばしを組織ぐるみで行う組織的な風土や振る舞いです。組織的先延ばしが怖いのは、集団化と大規模化を伴うことです。集団化とは、個人的先延ばしの傾向が少ない人が大半であっても集団になると先延ばししてしまうことです。大規模化とは組織ぐるみで先延ばしするので、その影響が甚大になることです。 組織的先延ばしの例を挙げましょう。反社会的勢力との取引排除を先延ばしにしたメガバンクがありました。製品不良への対策を先延ばししたメーカーは数多くあるでしょう。原発事故への抜本的な対策は先延ばしされています。エネルギー源の転換政策や消費税アップは政府と国民が一体となって先延ばししているようにも思えます。
先延ばししても最終的にやる組織はまだマシです。先延ばした挙句やらないという組織があることも事実です。結局やらない人は社会的不適合企業や団体になってしまいます。これも個人的先延ばしと同じです。 ひとつは「伝染型」です。「あいつが遅らせるなら俺も」という考え方が蔓延していくタイプです。このタイプの原因はいくつかあります。代表的なのは「遅れても上司や関係者から怒られない」という風土にあります。納期や約束事を重視しない顧客や経営者がいる会社に多く見られます。「時間がかかったほうが残業代が稼げる」ということが原因となっている会社もあります。残業の指示や時間管理がルーズな会社の場合です。こうした会社では「遅らせたほうがトク」という風土になり、先延ばししない人が減っていきます。
組織的先延ばしのもうひとつのタイプは「指示待ち型」です。大多数の人が「督促されたらやればいい」という考え方になっているものです。原因はワンマン社長にあります。気を利かせて早く仕事を進めてもワンマン社長に「余計なことをやるな」「こっちをやれ」と否定されるケースです。こうしたことがたび重なると社員の多くは「早くやると損する」という考え方になっていきます。「社長の指示がでるまでは動かない」「指示がでるまでは忙しいふりをしておく」という社員の集団が出来上がります。
|