1.納期遅れは生活習慣病である
(3)納期遅れと生活習慣病の類似点
慢性的な「納期病」は生活習慣病である。特定の病原菌が原因ではないからである。感染症ならば外部から侵入した病原菌を抗生物質で退治すれば治る。だが生活習慣病の原因は、体内の代謝の乱れである。体内で作られた脂肪やコレステロールが体調不良を引き起こす。「納期病」も同じである。目だった原因があるわけではない。
「納期病」は様々な企業で見られる。その背景には、日本の製造企業は納期にルーズなところが多いことが挙げられる。意外に思われるかもしれないが、トヨタを代表とするトップ企業以外は、納期遅れに寛容である。契約社会ではないアジア的な曖昧文化が支配的な企業が多い。曖昧文化のもとで「納期病」が病気だという自覚がないことが多い。これも生活習慣病と似ている。
致命傷になりにくい点も生活習慣病と同様である。その病気だけでは、すぐに死に到るわけではない。だから改善しようとする意欲が湧かない。しかし放置すると様々な合併症を発症する。肥満は心筋梗塞や脳梗塞など致命的な病気を併発する。納期病も「品質がよくならない」「コストが改善されない」「ブランドイメージが悪い」といった病気を併発し、いずれ死に到る。
納期を改善するには、納期遅れを「まあいいか」と放置するのではなく、生活習慣病なのだという自覚をもつことが第一歩である。