3.売りモノをピンポイントで決める
(2)売りモノは物だけではない
産業用製品の営業活動では「売りモノをピンポイントで決める」ことが必要である。産業用製品は、消費者向けの製品よりも売りモノがわかりにくい場合が多い。売りモノをピンポイントで決めないと、特に新規顧客は理解しにくい。
「うちは受託製造なので売りモノはありません」という会社がある。だが売りモノは、物理的なモノである必要はない。コバヤシ精密工業の例でもわかるように、相手の便益につながる特徴が売りモノになる。例えば、納期遵守率が高いこと、納入リードタイムが短いことは、産業用製品では重要な売りモノである。
他にもたくさん考えられる。外注を利用している顧客企業では、管理コストを削減するために「できるだけ一括発注したい」と考えているところが多い。それに対して量産だけでなく試作・設計・保守などを一括受託できることも売りモノになる。全部の業務ができなくても、自社がコア企業となって二次外注の管理ができれば売りモノとなる。
有名企業を顧客にしている会社では、取引実績を売りモノにできる。顧客企業の購買担当者から見ると上司への説得が容易になるという便益がある。ただしライバル企業と取引している会社を選びたくないという場合もある。その場合には、設計情報などの機密保持ができれば、それが売りモノになる。
先端加工技術の情報提供なども売りモノにできる。特に顧客が製造の大企業の場合に有利である。今は大企業ほど加工技術が失われていることが多いのだ。