「生産清流化」は、製造企業における業務革新・組織革新のシナリオです。納期短縮を目標として事業環境の変化に対応できるスピードを獲得します。組織革新の方向は自律化です。自律化によって組織の意思決定スピードを速くします。意思決定を速くするために組織は「分権化」していきます。組織の前線に意思決定権限を持たせることによって変化への対応を速く自律的にできるようにします。
■自律組織としてのレベルアップは管理指標から
企業全体の変革スピードを上げるには、企業が自律的な単位組織で構成される必要があります。単位組織とは概ね20名以下の集団です。企業によって違いますが、課や係と呼ばれている部署が相当します。課や係があたかもひとつの企業のように自律的に意思決定して行動を変革するのが目指すところです。
自律組織としてのレベルを上げるには、評価を変えていく必要があります。最初は、生産量、納期遵守率、不良率、稼働率、出勤率など職場内の管理指標を使うことが多いでしょう。しかしレベルアップするには、企業と同じレベルの管理指標にしていく必要があります。
■顧客満足度で評価する
評価で重要なのは顧客によるものです。顧客満足度が代表的です。後工程を顧客と見なして顧客満足度を評価することがひとつの方法です。理想的には企業全体の顧客の満足度を測定することです。その満足度を各組織の指標とする方法です。
■顧客は誰か特定する
顧客満足度を指標とするには、顧客一人ひとりを特定することが出発点となります。顧客に接しているのは、営業部門だけではありません。社内の各部門で発生します。そこで接した顧客一人ひとりを特定し、列挙することが最初の段階です。
これを組織的に実施している企業は少ないでしょう。通常、顧客企業を特定して列挙することは行われています。これがないと納品や代金回収ができないからです。しかし個人レベルで列挙している企業は稀です。営業社員は顧客個人を認識していても、それを組織的にリスト化していないことが多い。
消費財の場合には、さらに顧客個人を特定していないことが多いでしょう。最終消費者全員は困難であるが、直接接したことのある消費者や代表的な消費者だけでも組織的に特定しリスト化することが必要です。
■顧客の好みを把握する
顧客一人ひとりを特定したら、次に顧客に関する情報を集めます。顧客の氏名・住所・年齢・性別など基礎的な情報は最低限必要です。さらに職業・所属企業・役職など社会的な属性も把握します。生産財の顧客ならば、その人が属する企業の方針・計画・関連部門・今年度の目標なども把握したいところです。
消費財ならば、年収・家族・趣味・学歴・愛読誌など個人的な属性が重要です。これらは生産財の顧客の場合にも参考となることが多いでしょう。
顧客プロフィールの項目例
個人 |
年齢 年収 出身地 出身校 身長 体重
家族 兄弟 ペット
性格 得意なこと 苦手なこと
趣味 好きなこと 嫌いなこと
読んでいる本 読んでいる新聞 欲しいもの
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職業人 |
職位 職歴 上司 部下 業務目標
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所属企業 |
社長 組織図 グループ企業
資本金 売上高 利益額
製品 販売先 仕入先 取引銀行
導入している設備 購入している部品
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■顧客の情報を共有化する
顧客の情報は、顧客に対する各種の活動から集められます。各所で集めた情報を一元化して、全社的にいつでも見える状況にしておきます。顧客氏名を手がかりにして、個人に関する情報を見られるようにします。
具体的な手段としては、コンピュータを利用したデータベースを構築するのが良いでしょう。イントラネットを利用して、顧客に関する情報の登録と照会をどこでもできるようにします。製造企業で顧客一人ひとりの情報を組織的にデータベース化している企業は少ないでしょう。個人向けの金融業では個人のデータベースを持つことがあたり前ですが、製造企業にはこれがないことが多い。製造企業で個人の情報を組織的に保有することは、他社との差別化要素になり得ます。
ただし個人情報は、取り扱いに注意が必要です。個人情報保護の方針を設定し、保護できる仕組みを同時に作っておくことが求められます。
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