「生産清流化」は、製造企業における業務革新・組織革新のシナリオです。納期短縮を目標として事業環境の変化に対応できるスピードを獲得します。組織革新の方向は自律化です。自律化によって組織の意思決定スピードを速くします。意思決定を速くするために組織は「分権化」していきます。組織の前線に意思決定権限を持たせることによって変化への対応を速く自律的にできるようにします。
■自律組織の単位
企業全体の変革スピードを上げるには、企業が自律的な単位組織で構成される必要があります。単位組織とは概ね20名以下の集団です。企業によって違いますが、課や係と呼ばれている部署が相当します。課や係があたかもひとつの企業のように自律的に意思決定して行動を変革するのが目指すところです。京セラで行われているアメーバ組織が自律的な単位組織に該当するでしょう。
■コミュニケーションの基盤を作る
自律的な単位組織に限らず組織の能力は、個々の人材能力と組織のコミュニケーション能力で決まります。組織のコミュニケーションとは単に会話を指すのではありません。コミュニケーションは方法だけでも以下のようなものがあります。
コミュニケーションの方法
分類 | 内容 |
会話 | 話す 聞く 身振りで示す 発表する 指示する |
文書 | 書類で示す 掲示する 画面で写す |
共通体験 | 同じ状況を見る 共同作業する 同じ釜の飯を食う |
さらにコミュニケーションとはこうした方法を使って共通理解をすることが目的です。コミュニケーションの目的は以下のように業務と価値観を理解することです。
コミュニケーションの目的
目的分類 | 内容 |
業務の理解 | ・使っている単語や言葉が共有化されている ・業務や意思決定の手順が共有化されている |
価値観の理解 | ・組織として目指す共通の価値観が理解されている ・個人ひとりひとりが持つ世界観や価値観がお互いに理解されている |
■小集団を組織する
組織のコミュニケーション能力を上げるのに有効な方法は、共通体験を通じて業務や価値観を理解することです。そして最も効果的なのは小集団活動です。小集団活動とは3〜5人程度の小グループで業務改善に取り組む活動です。共通体験を通じて業務や価値観が共有化でき、同時に業務の改善も進みます。
課や係といった単位組織が少人数の場合は、単位組織イコール小集団とすればよいでしょう。単位組織が10人以上の場合は、いくつかの小集団に分割します。
小集団活動が定着した段階では単位組織を横断した小集団を編成するのも効果的です。たとえば複数の課から共通の課題を持つ人を集めて業務改善に取り組みます。横断的な課題解決ができると同時に、複数部門の価値観の共有化ができるでしょう。
■小集団で改善を実施する
組織の能力は、個々の人材能力と組織のコミュニケーション能力で決まります。組織のコミュニケーション能力を上げるのに有効な方法は、共通体験を通じて業務や価値観を理解することです。小集団を編成して改善に取り組むことが最も効果的です。
改善を実施する場合、進め方の雛形やツールがあるとスムースに進行できます。QC7つ道具や新QC7つ道具が有名ですが、QCストーリーと呼ばれる改善の手順を使うと有効です。QCストーリーは考え方や論理展開の標準になり、組織のコミュニケーションの基盤になります。そして一般社員だけでなく、管理者層の思考基盤としても有効です。QCストーリーはPDCAの考え方を基にしているのでマネジメントとも共通だからです。
■FIDSで改善する
生産清流化の一環として進める小集団活動では、PDCAではなくFIDSのサイクルで行います。FIDSとはFeel・Imagine・Do・Shareの頭文字です。これは「Design For Change」という子ども向けの教育プログラムで使われる手法です。
Design For Changeとは(Design For Change Japanのサイトから)
子どもたちが、
自分の身の回りに潜む問題を見つけ、
自分たちの頭でそれらを解決するアイディアを考え、実践する。
そして、生み出した変化を世界中でシェアしていく。
そうした思考と行動を促すデザイン・シンキング・プログラムです。
“feel”“imagine”“DO”“share”の4つのシンプルなステップで、
子どもたちの「Can I(ムリ)?」を「I can(できる)!」に変えていきます。
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この「Design For Change」は企業の改善活動にも適用できます。企業の改善にあてはめれば以下のようなステップとなります。
FIDSを応用した改善のステップ
手順 | 概要 |
Feel (何を変えるか) |
テーマは何か | 対象とする製品・業務と改善目的を決める |
何が起こっているのか | 対象業務の流れ・手順・担当者、問題の発生経緯・発生状況・発生頻度、問題の具体例、問題の影響、関連する会社方針、関係者の考えを調べる |
Imagine (どこまで変えるか) |
目標は何か | 数値指標・目標値・実行日程と期限を決める |
攻めどころ(要因)は何か | 問題の攻めどころ(要因)と重要度を推定し検証する |
Do (どうやって変えるか) |
対策は何か 誰がいつやるか | 対策案の採否・担当・期限を決めて実行する |
Share (どうやって定着・拡大するか) |
対策の効果は出たか | 目標に対する実績と波及効果を確認する |
標準化と教育はどうするか | 標準化と教育を実施し、次のテーマを決める |
FIDSは、マネジメントで使われるPDCAと似ています。FeelとImagineはPDCAのPlanに該当します。DoはPDCAでもDoです。ShareはPDCAのCheckとActに相当します。PDCAはトップダウンの色彩が強いのに比べて、FIDSは自主性・創造性・共感性が強調されています。
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