第1章 デリバリー管理
1.8 全社的デリバリー管理 製品(流通)在庫削減段階
(1)製品(流通)在庫削減段階の概要
製品(流通)在庫削減段階での実施事項・ツールを表1.7に示します。
表1.7 製品(流通)在庫削減段階の実施事項・ツール
<活動> | <実施事項・ツール> |
デリバリー保証 |
・在庫基準 |
創発活動 |
・ロジスティクス月報 ・ビジョンチーム活動 ・部門横断チーム活動 |
評価制度 |
・在庫回転率 ・キャッシュフロー評価 |
方針管理 |
・在庫削減目標 ・キャッシュフロー目標 |
改善活動 |
・在庫形成要因マップ ・物流コストマップ
・業務改革プロジェクト推進手順 ・生産・物流拠点再配置 |
この段階では、見込み生産形態をとっている企業を対象に、製品(流通)在庫の削減を行います。上表からもわかるとおり、実施事項・ツールはステップ3(材料・仕掛り在庫削減段階)と似ています。違うのは、ステップ3は主に工場内を対象にしているのに対し、このステップ5では販売会社や代理店も含めた広域を対象としている点です。ほとんどの場合、「生産・物流拠点配置見直し」が必要になります。
生産と物流の拠点配置を見直すには、顧客に対する納入リードタイムの再設定から始めます。顧客が注文してから納入するまでのリードタイムは、同じ業界に属する企業が横並びで決めていることが多いのです。これを再設定することが起点となります。一般的に納入リードタイムを短くすると、売上は増加しますが、同時にコストも増加します。逆に納入リードタイムを長くすると売上・コスト共に減少します。売上とコストの変化を予測して納入リードタイムを見直すのです。
同時に価格設定を見直す必要もあります。写真のプリントサービスでは、45分でできる店や翌日仕上げの店、中1日で仕上げる店があるのはご存知でしょう。それぞれ価格が違います。納入リードタイムによる売上数量・コストの変化と価格弾力性を同時に考慮しながら、納入リードタイムと価格を再設定します。
納入リードタイムと価格を再設定したら、それを達成できる物流拠点の配置を決定します。都道府県別の営業所を物流拠点とするのか、あるいは地方別の拠点とするのかといった配置を決定します。注文から納入までが中2日以上とれるなら全国1カ所で済むでしょう。顧客がメーカーや小売店の場合には、顧客も在庫を持っています。その在庫を取込んで共同在庫化し、VMI(ベンダー主導型在庫管理)に移行することも選択肢のひとつです。
つぎに生産拠点の配置です。地方別に複数の生産拠点を持つのか、全国1カ所とするのか、あるいは海外生産とするのかを決定します。物流拠点と生産拠点を統合するのが最もシンプルです。しかし物流拠点が分散している場合、それに合わせて生産拠点を分散すると各生産拠点の生産量は集中した場合に比べて変動が大きくなります。その変動を吸収するには、生産余力が必要です。一方、生産拠点を集中したり、海外生産とした場合には、製品の輸送費用と在庫が増加します。
製造原価や輸送費用だけでなく、設備投資・在庫投資・在庫増加に伴う製品陳腐化のリスクを総合的に判断して生産拠点の配置を決定します。一般的にパソコンのように製品陳腐化の速い商品の場合、在庫が少なくなる拠点配置が有利です。
拠点配置のように全社的な最適化が必要な場合、その評価が重要です。評価制度によって施策や改善の方向が変わってきます。ここでは「評価制度」とその運用について説明を加えます。これは製品在庫削減段階だけにあてはまるものではなく、全ての段階で共通です。