納期半減の生産清流化
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先延ばし症候群 その原因と対策
2.個人的先延ばしの類型
(2)脳の構造と行動変化

 前節で「個人的先延ばし」には3種類あると言いました。次章以降にタイプ別の対策を示しますが、対策の前に脳の構造について触れておきます。

 近年の脳科学の発展は著しいものがあります。脳と行動・意思決定・性格との関係がかなり明らかになっています。先延ばしも脳のクセが行動に影響しているものです。脳科学の成果は多岐にわたりますが、ひとつの知見を紹介しましょう。人間の脳は進化の過程を経て多層構造になったということです。

 人間の脳は「爬虫類脳」「哺乳類脳」「人間脳」と呼ばれる3層に分けられます。「爬虫類脳」は魚類や爬虫類と共通の一番原始的な脳です。脳の部位では脳幹や小脳など、脳の奥部や中枢神経に近い部分が相当します。呼吸・循環・運動を司っている部分です。「爬虫類脳」は生まれながらに持っている「本能」に関連しています。赤ちゃんは生まれてすぐ呼吸をはじめて泣きます。手のひらに触れたものはつかもうとします。これらの行動は訓練なしに生まれもっている本能でできることです。

 五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の中では嗅覚が「爬虫類脳」に直結しているとされています。嗅覚は後天的な学習と無関係に本能に働きかけるのです。「爬虫類脳」の反応スピードは最速です。中枢神経に近い部分で処理されるので行動に即反映されます。異常な臭いを嗅いだら本能的に逃げるのは爬虫類脳の働きです。爬虫類脳は本能ですから変えるのは難しい。行動経済学で「現状維持バイアス」と呼ばれている現象があります。新たなチャンスを提示されても人間は現状を維持しようとする傾向があることを指しています。これは爬虫類脳が司る本能があるからです。

 「哺乳類脳」は哺乳類と共通の少し進化した脳です。脳の部位では大脳の表面のほうにある大脳新皮質と呼ばれる部位が関連します。大脳新皮質の中でも側頭葉や後頭葉と呼ばれている部位です。哺乳類脳は「無意識」に関連しています。訓練によって後天的に獲得されるが無意識にできるようになる行動を司っています。イヌが人間の指示に従ったり、サーカスのクマがオートバイに乗るといった芸ができるようになるのは哺乳類脳があるからです。通いなれた道路を自動車で通う場合を思い出してみましょう。途中の信号がどうだったか、ハンドル操作をどうしたかなどは憶えていないでしょう。無意識の哺乳類脳が処理しているからです。

 「哺乳類脳」の反応は爬虫類脳に次いで速いものです。無意識の行動ですから訓練によってスピードや正確性を高めることができます。一方、哺乳類脳の反応には可塑性もあると言われています。訓練しだいで行動が変えられるということです。何歳になっても新しいスポーツに挑戦したり、新たな習慣を獲得することができます。脳梗塞で歩くのが不自由になった人が訓練しだいで歩けるようになるのも、脳の健全な部分が機能を代替して可塑性を持つからだとされています。

 「人間脳」は人間特有の部分です。脳の部位では「前頭葉」と呼ばれる部位が相当します。人間脳は「意識」に関連しています。意識的な行動や「やる気」に関連しています。「お金が稼げそうだから資格試験の勉強をする」といった行動は典型的な「人間脳」による行動です。資格試験やお金は爬虫類や哺乳類にはありません。人間の世界にも1万年前にはなかったと思いますが、こうした新しい概念を考え出し、それに行動が左右されるのが人間脳の特徴です。「人間脳」に左右される行動は、理解が変わると変化する可能性があります。「この資格は儲かりそうもないから、こっちの資格にしよう」といったことです。

 人間脳は理屈で考えて行動に結びつけるため反応は最も遅くなります。人は意識したことが行動に現れると思っていますが、それは間違いです。脳科学の実験によると「やろう」と人間脳が思う何秒も前に爬虫類脳や哺乳類脳が行動を決めていることが明らかになっています。また「やる気があるから行動している」というのも錯覚です。行動していると後からやる気がでてくることが明らかになっています。

脳の構造と行動変化
脳の構造と行動変化

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