2.評価を変えて全員で取り組む
(2)納期改善がキャッシュを生む
慢性的な「納期病」は生活習慣病である。業務のやり方とその背景にある心を変えなければ納期病は治らない。まず必要なのは、「納期改善の効果を理解する」ことである。納期改善の具体的なメリットを知らないままでは、行動と心は変わらない。納期改善には大きな効果があることを理解することが第一歩である。
納期改善の効果は数多くある。だが改善を進めていない企業では、それを軽視している。心理的な効果しかないと思っている場合が多い。だが納期改善は、財務上の効果が大きい。決算書に確実に現れる。特にキャッシュフローに対する効果は大きい。
受注から納品までの納期が早くなることによって、受注残を売上に変えられる。売上を回収すれば現金が得られる。受注伝票を紙幣に換えられるのだ。また短納期を求める顧客に販売を拡大することができる。受注そのものが増える。自社製品を持っている企業ならば、他社に先駆けて新製品を販売することができる。電気製品など競争のスピードが激しい業界では、発売が1週間早くできただけで、高価格を設定できるだろう。
顧客から見た納期が早くなることは、社内の工期が短くなることでもある。常に資材は最新の価格で買えることになる。金属材料など資源不足のものは別にして、一般的に部品などは時間が経過するほどコストダウンが進む。社内の設計や製造方法も日々コストダウンが進む。常に最新のコストダウン設計を取り入れられることになる。また、工期を短くしようとすると工程の統合やレイアウトの改善が進む。それに伴って工程管理者や運搬作業者が減る。
工期が短くなると検査結果のフィードバックも早くなる。不良が発生してもその金額は少なくなる。原因解析も容易になり不良の発生率も低下する。これらはすべて製造原価を下げる要因である。
納期短縮は、在庫滞留が減ることが伴う。製品在庫が減れば、売れ残りの安売りが減る。有効期限や賞味期限がある製品では、安売りもできないと廃棄するだけになる。これも減る。これらは売上高に直接効いてくる。
製品在庫・仕掛在庫・材料在庫いずれにも調達した資金が投入されている。在庫が減れば投入されていた資金が売上を通して現金化されることになる。キャッシュフローに大きく影響することは言うまでもない。また在庫に投入していた資金の金利、倉庫の賃借料、倉庫の管理者、荷扱いの手間などのコストが減る。
こうした効果を合計すると、納期を1ヶ月短縮すると、売上高の1.5ヶ月〜3ヶ月ぶんのキャッシュに相当する。幅があるのは、主に製品のライフサイクルの速さによる。成熟製品で1.5ヶ月、陳腐化の早いハイテク製品などでは3ヶ月ぶんに達する。