2.顧客をピンポイントで決める
(5)ランニングコストで訴求する例
顧客を決める際にランニングコストの点から絞り込んだ例を示す。町田市のI社は水処理機器を製造販売している会社である。I社では、対象顧客を施設更新時期にあるホテルや旅館としている。製品はホテルや旅館の風呂やプールの水浄化に使われる。
I社では、インバータを使った省エネ電源装置も販売している。施設が老朽化しているホテルや旅館では、古い電源装置を使っているので、これに交換するだけで経費節減効果が得られる。
この会社は営業方法に特徴がある。まず銀行へ売り込みにいくのだ。ホテルや旅館の多くはバブル期が終わった後、経営が行き詰まったところが多い。その再建のために銀行が支援している。その後、経営を続けているところでは投資の節減に努めてきたが、そろそろ限界である。今後事業を継続しようとすると設備更新が必要になっている。
そこで銀行に省エネ電源装置を紹介する。省エネ電源を入れると事業継続と経費節減の両方に効果があるのだ。節減した経費によって投入した資金はすぐ回収できる。次に電力料節減を原資として融資を引き出し、本命の濾過装置や殺菌装置を提案するのだ。
この例ではランニングコストの課題を持つ顧客に絞込み、さらに資金提供者まで想定している点でユニークである。